札幌から小樽へ向かうJR函館本線の車窓に思うこと
同じ景色なのに、なぜこんなにも心を動かされるのだろう。
札幌から小樽へ向かうJR函館本線。
この路線は、北海道を訪れる多くの人が利用します。
けれど、その車窓から見える景色を、どれほどの人がゆっくり眺めているでしょうか。
実は私も学生時代、社会人になっても、この列車に何度か乗っていました。
当時の私は、その景色に特別な感動を覚えた記憶がありません。
ただ目的地へ向かうための移動時間。
窓の外には海が広がっていたのかもしれませんが、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。
変わったのは景色ではなく、私自身でした。
自然観察が趣味になってから、同じ路線に乗るたびに、その美しさに心を奪われるようになったのです。
銭函を過ぎるころから、列車の右側にはどこまでも海が続きます。
海は一つとして同じ表情を見せません。
青く澄み渡る日。
深い藍色に染まる日。
緑を帯びる日。
白い波が力強く海岸へ押し寄せる日。
時間帯や天気によって、まるで別の海のように姿を変えていきます。
そして張碓から朝里へ向かう区間では、列車は海のすぐそばを走ります。
カーブでは車体がゆっくり傾き、揺れながら進む列車。
ふと窓の外を見ると、まるで海の上を走っているような錯覚に包まれます。
映画『千と千尋の神隠し』で、海の上を列車が走る印象的な場面があります。
あの幻想的な世界を思い出す瞬間が、この区間には何度もあります。
だから私は、急いでいる日であっても、できるだけ各駅停車を選びます。
快速列車なら数分早く着きます。
それでも私は、その数分より、この景色をゆっくり眺める時間を選びたいのです。
座る場所にも少しこだわりがあります。
写真を撮りたいなら進行方向右側。
でも、景色に包まれながら静かに旅を楽しみたいなら、私は左側をおすすめします。
視線を少し横へ向けるだけで、海全体をゆったりと眺めることができるからです。
夏になると、私にはもう一つ楽しみがあります。
それはアオバトです。
この海岸には、ときどきアオバトが姿を見せます。
もちろん毎回ではありません。
もしかすると100回乗って1回出会えるかどうか。
そんな小さな奇跡です。
窓の外を飛ぶ緑色の鳥を見つけるたび、
「アオバトですよ!」
と車内のみなさんに教えたくなる衝動に駆られます。
きっと多くの人は、その存在に気づかないまま通り過ぎてしまうのでしょう。
冬になると、この景色はまったく違う顔になります。
吹きつける雪。
荒れる海。
白く霞む水平線。
私は千葉で育ちました。
都会育ちの私にとって、海は今でも少し怖い存在です。
森へ入ると安心するのに、海を前にすると圧倒される。
美しい。
でも少し怖い。
だからこそ、心が震えるのかもしれません。
その「ゾクゾク」と「ワクワク」が同時に押し寄せる感覚は、この車窓ならではのものです。
学生時代には気づかなかった景色。
でも今は、その景色に会いたくて列車に乗っています。
景色は昔と何も変わっていません。
変わったのは、私の見方でした。
もしかすると、アートも同じなのかもしれません。
作品はそこにあります。
けれど、その美しさに気づくかどうかは、見る人の心が決める。
札幌から小樽へ向かう列車の窓は、そんなことを静かに教えてくれる、小さな美術館なのです。
How Art You Otaru Information
札幌から小樽までの美しい車窓を楽しんだあとには、How Art You Otaruで、もう一つの「心が動く景色」に出会っていただけたら嬉しく思います。
How Art You Otaru(はうあーとゆーおたる)には、ゆっくりとお過ごしいただけるカフェスペースを併設しています。
小樽観光の合間や、お散歩のひと休みに、人気の本格チュロスと美味しいお飲み物はいかがでしょうか。
色彩豊かなハッピーアートに囲まれながら、心が少し軽くなるような、穏やかな時間をお楽しみください。
皆さまのお越しを心よりお待ちしております。